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たんぽぽ舎です。【TMM:No2562】
2015年8月11日(火)その2 地震と原発事故情報-3つの情報をお知らせします
転送歓迎
━━━━━━━
★1.抗議声明
電力は足りている、しかも安全性は確保されない
危険な原子炉を起動する暴挙は許されない
たんぽぽ舎
★2.議論が分かれる巨大地震前の「静けさ」 「地震空白域」検証も
「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその114
島村英紀(地震学者)
★3.新聞より2つ
◆再稼働「なぜ急ぐ」 現地周辺で2000人集会 危険性訴え行進
(8月10日南日本新聞20面「川内原発を考える」より抜粋)
◆再稼働反対デモに2000人 川内原発周辺で最大規模
(8月10日毎日新聞・鹿児島版26面より)
━━━━━━━
※8/13川内原発再稼働反対!NO NUKES DAY 九電東京支社大抗議
8月13日(木)19時より20時30分
有楽町電気ビル正面玄関前(JR有楽町駅日比谷口)
主催:首都圏反原発連合/さようなら原発1000万人アクション/
原発をなくす全国連絡会
━━━━━━━
┏┓
┗■1.抗議声明
| 電力は足りている、しかも安全性は確保されない
| 危険な原子炉を起動する暴挙は許されない
└──── たんぽぽ舎 2015年8月11日
九州電力は8月11日午前10時30分、川内原発1号機の制御棒を引き抜き、原子炉を臨界状態にする「起動」を開始した。
4年5ヶ月前の今日、福島原発震災を経験し、未曾有の原子力災害が引き起こす残酷な現実を突きつけられた日本が、再び多くの原発を基幹電源として起動させる政策決定の第一号として、川内原発を起動する暴挙に出たことは、世界に対しても重大な背信行為である。
1.東京電力福島第一原発の事故原因は「未確定」
福島第一原発事故は現在も原因が確定していない。
政府事故調査委員会と国会事故調査委員会の報告書では、事故の原因についても見解が異なっている。
国会事故調査報告書では、津波の前に地震による影響も生じていた可能性が指摘されているが、その後の調査は、その点を全く無視して行われ、他の原発に要求されている対策でも、ほぼ津波対策に特化しており、原因の一部にしか対策されていない。
外部電源を非常用設備の一部として強化、安定性の向上をすべきところも、巨額の費用負担を懸念して、脆弱なままで放置された。
しかし外部電源が1回線でも生き残ったことが、女川原発や福島第二原発を過酷事故からかろうじて救った事実を指摘する。
さらに、原発の過酷事故対策が、福島第一原発事故事故において、どのように作用し、結果として原子炉を破壊する方向に働いたのか、守る方向に働いたのかさえも、確定していない。数ある分析においては、原発の過酷事故対策として採られた方法に問題があった場面も指摘されている。
当然これらの分析が確定しなければ、新たな事故対策を策定することも困難であり、実際に九州電力などが策定している運転規定(保安規定)において実施されるとしている対策に大きな誤りのある可能性が指摘されている。
これらも一切が議論をされずに原子炉を起動したのは、新たな事故を準備する行為であると言わなければならない。
2.新規制基準による「再稼働」の危険性
「世界で最も厳しいレベルの規制基準」と、ことあるごとに政府は主張し続ける。しかし「世界で最も厳しい」には何の根拠もない。特に、少なくても30km圏内の住民避難の計画、更に遠くに拡散する放射性物質の避難対策を義務づけるIAEA国際原子力機関の基本安全原則では、過酷事故発生後の事故影響緩和策として「第4層」「第5層」が規定されている。
そのうちの第4層については、格納容器防護を基本とした過酷事故対策が規定されているが、この対策そのものが、福島第一原発事故を分析し教訓化できていないため、ちぐはぐなうえ危険な内容になっている。
特に圧力容器減圧操作を基本とした「フィードアンドブリード」はむしろ炉心溶融を加速させかねず、十分に吟味した対策ではない。
このような措置が可能となるためには、全ての圧力環境下において十分な一次冷却材注入能力を確保しておかねばならない。もちろん全電源喪失条件下に置いてである。しかしそのような抜本的対策は時間もコストも掛かり過ぎるため検討もされずに放棄されており、既存の注入設備に加えて消防用水配管からの消防ポンプを使った注水が新たに加えられた程度である。
もちろん原子炉運転圧力では注入できるはずがないので、この状態でフィードアンドブリードを強行する可能性がある。本来の意味は注水してから減圧する、であるが実際には「減圧してから注水する」になってしまう。これでは圧力容器はあっという間に空になるのに炉心に水は入らず、メルトダウンを引き起こす。
実際に福島第一原発事故で起きたことである。
格納容器の安全確保のためには窒素封入すべきであるが、川内を含む加圧水型軽水炉は、それを拒否し続けている。
一方で、燃料破損や水の放射分解で発生する水素対策は、イグナイタ(点火装置の意味)で燃焼処理することになっているが、格納容器や配管損傷により一気に大量発生するような場合は特に、燃焼処理ではなく起爆装置になりかねない。 福島第一及び米国スリーマイル島原発事故の教訓からも可燃性ガスが大量に生ずる場合は、水素の逃がす装置を取り付けると共に、酸化剤つまり酸素を取り除くしかないのである。
原子炉を含む一次冷却材系統全体を防護するには、パラメータの監視は欠かせない。ところが福島第一原発事故では電源を全て失ったため、温度も圧力も水位も分からなくなった。これでは何をすれば良いか、したことに効果があるか、方針の変更をすべきタイミングかどうか、一切判断できない。
格納容器ベントを強行した福島第一原発事故では、吉田所長は最後まで「ベントが成功したかどうか分からなくなった。」と答えていた。
川内原発では、可搬システムも含めれば測定可能とされており、全てパラメータを監視して作業を継続することになっているが、こんな予定調和的な事故は起こらない。全ての電源を失っても、原子炉を冷却し続ける設備でなければ、教訓を生かしたことにはならない。
3.第5層の防護を放棄
「世界で最も厳しいレベルの規制基準」というのであれば、IAEAの安全対策「第5層」についても規制基準に取り込み、規制委員会が責任を持って審査するべきである。ところが規制委員会は防災対策を自治体に丸投げした。30km圏内の自治体でさえ、まともに計画も作れないまま、原発が動きだそうとしている。
これが世界で最も厳しいとは、あきれ果てる。米国は原子力規制委員会が自治体と事業者に義務づけている。実行性が無い計画ならば原発の運転認可が下りない。
日本に比べて人口密度が比較的低く、車社会である米国でさえ、住民の安全対策には規制当局も責任を負っている。これだけみても、日本の規制基準は米国以下であることは論を待たない。
原子力防災・住民避難計画については、自治体丸投げを止めて、国も責任を負うように災害対策基本法を改正する必要がある。
また、規制委員会設置法も、改正すべきだ。少なくても米国並みに緊急時の原子力防災・住民避難計画が、すべての規制対象の基本になるべきであり、それが達成されるまで再稼働の議論そのものも出来ないはずなのだ。
4.戦争法案と一体となった原発再起動
今日のシナリオは、既に2012年には明らかになっていた。
まだ野田政権だった時代の2012年8月15日(67回目の敗戦記念日である)に、米国「第3次アーミテージ・ナイレポート」が発表された。リチャード・アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国務次官補(ハーバード大学教授)を中心とした超党派の外交・安全保障研究グループ、CSIS国際戦略研究所による日本への「提言」である。いわば「外圧」文書であるが、主張を全部公開して圧力を掛けているわけだ。
この中で、原発の再稼働が明記されている。当時は民主党政権下において2030年代までに原発を全て廃止する方針が論議されていた。しかし閣議決定は見送られた。米国からの圧力であった。原発からの段階的撤退を、さらなる原発輸出へと方針を180度転換させた。
このレポートには他に重要な記述が沢山会ったが、現在大きな問題になっている、安倍政権による「集団的自衛権の行使容認」「TPP」「PKO」「戦後70年談話」これら全て、レポートに「指示された」内容になっている。そのため、一つ一つについて国会などで質問をされても、安倍首相をはじめ誰もがまともに答えられない。憲法学者が憲法に違反していると指摘されても、お門違いの砂川最高裁判決を持ち出したり、「統治行為論」でごまかそうとしたりするが、まともに論理を構築できないのは、結論ありきだからだ。
5.原発を動かして赤字になる電力会社
九州電力を含めて全電力は「原発を稼働させなければ赤字になる」などと主張するが、実際には全く電気を生まない原発に、巨額の投資を続けながら火力発電を続けるならば赤字になるのは当たり前である。
発電設備に占める原発の比率が高い電力ほど、厳しくなるのは小学生にも分かる理屈である。それなのに原発に資金をつぎ込み続ける行為は、経営者としてそもそも失格であり、そんなことにまでどうして消費者が「電力料金」で買い支えてあげなければならないのか。全く本末転倒であり、電力の経営が厳しいから再稼働など、そもそも理由になどならない。
また、原発が動き出しても電力の経営は好転しない。なぜならば、九州電力でたかだか89万kwの設備が2基動く程度では、焼け石に水だからだ。
九州電力は設備全体で1600万kwほどを今季最大電力と見積もっている。
その1割強を原発が占めているに過ぎず、発電コストを引き下げる効果はほとんど無い。むしろ対前年比「定着節電」「他電力への移動」があわせて181万kwと、原発分をまかなってしまっている。電力消費量は年々低下を続ける中で、つまり電気料金収入が減少し続ける中で、川内、玄海原発に係る設備投資が減らないどころか増え続ける一方ならば、動かし続けていても経営状態を改善する効果はほとんど無い。
それでも原発に固執し続ける背景には、国からの大きな圧力があると見るのが自然だろう。
6.これからも原発の停止を訴え続けよう
原発を動かしても電力会社にとっては針のむしろ状態は変わらない。これからは、事故が起きれば経営者の個人責任も厳しく追及される時代になっている。
検察審査会による東電取締役3名の強制起訴が、次の事故では直ちに起訴される可能性も出ている現状では、電力会社の取締役個々人の判断にも大きな影響を与える可能性がある。
また、首相官邸、国会前に集まる人々が今も続いていることは重要だ。経産省前にはテントも頑張っている。
世論調査はどれをみても、過半数を大きく超える声が「再稼働反対」を支持している。
福島の被害者は、自分たちを置き去りに進められた原発再起動に強い怒りを表明している。
今後、事故の脅威にさらされる人たちからも、怒りの訴えが続いている。
原発前から国会前に至る、全国の声を、国、電力、経産省、規制委員会にぶつけて、一日も早く原発災害を案ずる必要の無い日々を作るために、これからも力の限りがんばろう。
┏┓
┗■2.議論が分かれる巨大地震前の「静けさ」 「地震空白域」検証も
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその114
└──── 島村英紀(地震学者)
「嵐の前の静けさ」が大地震の前にもあるものかどうか。これはいまだに解けない問題である。
地震学者は古くから、この現象「地震空白域」の検証に取り組んできた。
もっとも有名だったのが北海道・根室沖に起きた海溝型の地震だ。
ここでは1952年に十勝沖地震(マグニチュード(M)8.2)が西隣に、そして1969年に色丹(しこたん)島沖地震(M7.8)が東隣に起きて、その間の根室沖が抜けていた。どれも海溝型地震である。
たしかにこの場所には小さい地震がまわりより少なく「嵐の前の静けさ」を感じさせた。
かつて根室沖には、1894年にM7.9と推定される海溝型の大地震が起きた。それから100年近くたち、地震エネルギーはかなり溜まっていても不思議ではなかった。
このため、ここにまた大地震が起きるのではないか、と1970年代に入ってから言われはじめた。
小さな地震さえも起きなくなっている領域、空白域の拡がりから、来るべき大地震の震源断層の大きさも推定された。それはM8クラスの巨大地震であった。
震源断層が大きいほど、大きな地震が起きる。2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は岩手県沖から茨城県沖までの南北450キロメートル、東西150キロメートルにもおよぶ大きな震源断層だった。
来るべき大地震がいつ起きるかは分からない。だが固唾を呑んで待っていた1973年、ついに、それらしき地震が起きた。根室半島沖地震だ。
この地震で津波による浸水被害が300棟近く、負傷者は26人出た。Mは7.4だった。
だがその後、この地震が予想されていた大地震ではなかったという説が強い。M7.4はM8地震のエネルギーの1/8でしかないからだ。
空白域が来るべき大地震の場所と大きさを予知できるはずだという研究はその後も少なくない。大地震が近づくと、その空白域の中にぽつぽつ、地震が起き始めるという研究も近年にはある。
ちょうど6年前の2009年8月、南海トラフ地震で警戒されている震源域の中で強い地震が起きた。震源は駿河湾内。最大震度は6弱に達した。Mは6.3。幸い大きな被害はなかったが、東名高速道路が4日間不通になって、道路だけで経済損失額は21億円になった。
2011年にも静岡県東部で最大震度6強を記録したM6.4の地震があった。この地震は東北地方太平洋沖地震の4日後で、この地震による誘発地震ではないかと思われている。
南海トラフ地震で予想される震源域は、この数十年間、地震活動がとくに低い。つまり空白域になっている。
学問的には空白域がきたるべき大地震の先駆けになるのか、そして大地震が近づくと空白域の中で地震が起き始めるのかは決着が付いていない。そうではなかった例も多いからだ。
しかし、いままでは地震がほとんどなかった静岡でぽつぽつ起きている地震は気味が悪い。
(島村英紀さんのHP「 http://shima3.fc2web.com/ 」
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より8月7日の記事)
┏┓
┗■3.新聞より2つ
└────
◆再稼働「なぜ急ぐ」 現地周辺で2000人集会 危険性訴え行進
九州電力川内原発の再稼働に反対する「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は9日、薩摩川内市久見崎町の原発周辺で大規模な集会とデモ行進を実施した。県内外から約2000人が集まり、「再稼働やめろ」「原発いらない」とシュプレヒコールを上げた。
集合場所の久見崎海岸では、市民団体の代表や県外からの参加者が原発の危険性や九電への批判を唱えた。 (中略)
東日本大震災が起きるまで福島県で農業をしていた元宇宙飛行士の大学教授、秋山豊寛さん(73)も京都から参加。「電力会社や政府は一般の人が声を上げるのを最も恐れている。一人一人が声を上げよう」と語った。
(8月10日南日本新聞20面「川内原発を考える」より抜粋)
◆再稼働反対デモに2000人 川内原発周辺で最大規模
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働への反対を訴えようと「川内原発再稼働阻止!大集会」が9日、川内原発脇の海岸であった。実行委員会の発表によると約2000人が参加。九電が11日に再稼働させるとみられる中、川内原発周辺での集会としては過去最大規模となった。「原発事故から命を守れ」などと訴え、原発正門前までの約2キロをデモ行進した。
原発問題に詳しいルポライターの鎌田慧さんが集会であいさつし、「(事故発生を前提に)安定ヨウ素剤を配布して原発を稼働させるのは、人が死んでも構わないということ。モラルに反することが平然と行われている」と批判した。参加者は「命と大地を放射能から守れ」「福島を忘れない」などと書かれた横断幕を手に練り歩いた。
(8月10日毎日新聞・鹿児島版26面より)
2015年8月11日(火)その2 地震と原発事故情報-3つの情報をお知らせします
転送歓迎
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★1.抗議声明
電力は足りている、しかも安全性は確保されない
危険な原子炉を起動する暴挙は許されない
たんぽぽ舎
★2.議論が分かれる巨大地震前の「静けさ」 「地震空白域」検証も
「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその114
島村英紀(地震学者)
★3.新聞より2つ
◆再稼働「なぜ急ぐ」 現地周辺で2000人集会 危険性訴え行進
(8月10日南日本新聞20面「川内原発を考える」より抜粋)
◆再稼働反対デモに2000人 川内原発周辺で最大規模
(8月10日毎日新聞・鹿児島版26面より)
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※8/13川内原発再稼働反対!NO NUKES DAY 九電東京支社大抗議
8月13日(木)19時より20時30分
有楽町電気ビル正面玄関前(JR有楽町駅日比谷口)
主催:首都圏反原発連合/さようなら原発1000万人アクション/
原発をなくす全国連絡会
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┗■1.抗議声明
| 電力は足りている、しかも安全性は確保されない
| 危険な原子炉を起動する暴挙は許されない
└──── たんぽぽ舎 2015年8月11日
九州電力は8月11日午前10時30分、川内原発1号機の制御棒を引き抜き、原子炉を臨界状態にする「起動」を開始した。
4年5ヶ月前の今日、福島原発震災を経験し、未曾有の原子力災害が引き起こす残酷な現実を突きつけられた日本が、再び多くの原発を基幹電源として起動させる政策決定の第一号として、川内原発を起動する暴挙に出たことは、世界に対しても重大な背信行為である。
1.東京電力福島第一原発の事故原因は「未確定」
福島第一原発事故は現在も原因が確定していない。
政府事故調査委員会と国会事故調査委員会の報告書では、事故の原因についても見解が異なっている。
国会事故調査報告書では、津波の前に地震による影響も生じていた可能性が指摘されているが、その後の調査は、その点を全く無視して行われ、他の原発に要求されている対策でも、ほぼ津波対策に特化しており、原因の一部にしか対策されていない。
外部電源を非常用設備の一部として強化、安定性の向上をすべきところも、巨額の費用負担を懸念して、脆弱なままで放置された。
しかし外部電源が1回線でも生き残ったことが、女川原発や福島第二原発を過酷事故からかろうじて救った事実を指摘する。
さらに、原発の過酷事故対策が、福島第一原発事故事故において、どのように作用し、結果として原子炉を破壊する方向に働いたのか、守る方向に働いたのかさえも、確定していない。数ある分析においては、原発の過酷事故対策として採られた方法に問題があった場面も指摘されている。
当然これらの分析が確定しなければ、新たな事故対策を策定することも困難であり、実際に九州電力などが策定している運転規定(保安規定)において実施されるとしている対策に大きな誤りのある可能性が指摘されている。
これらも一切が議論をされずに原子炉を起動したのは、新たな事故を準備する行為であると言わなければならない。
2.新規制基準による「再稼働」の危険性
「世界で最も厳しいレベルの規制基準」と、ことあるごとに政府は主張し続ける。しかし「世界で最も厳しい」には何の根拠もない。特に、少なくても30km圏内の住民避難の計画、更に遠くに拡散する放射性物質の避難対策を義務づけるIAEA国際原子力機関の基本安全原則では、過酷事故発生後の事故影響緩和策として「第4層」「第5層」が規定されている。
そのうちの第4層については、格納容器防護を基本とした過酷事故対策が規定されているが、この対策そのものが、福島第一原発事故を分析し教訓化できていないため、ちぐはぐなうえ危険な内容になっている。
特に圧力容器減圧操作を基本とした「フィードアンドブリード」はむしろ炉心溶融を加速させかねず、十分に吟味した対策ではない。
このような措置が可能となるためには、全ての圧力環境下において十分な一次冷却材注入能力を確保しておかねばならない。もちろん全電源喪失条件下に置いてである。しかしそのような抜本的対策は時間もコストも掛かり過ぎるため検討もされずに放棄されており、既存の注入設備に加えて消防用水配管からの消防ポンプを使った注水が新たに加えられた程度である。
もちろん原子炉運転圧力では注入できるはずがないので、この状態でフィードアンドブリードを強行する可能性がある。本来の意味は注水してから減圧する、であるが実際には「減圧してから注水する」になってしまう。これでは圧力容器はあっという間に空になるのに炉心に水は入らず、メルトダウンを引き起こす。
実際に福島第一原発事故で起きたことである。
格納容器の安全確保のためには窒素封入すべきであるが、川内を含む加圧水型軽水炉は、それを拒否し続けている。
一方で、燃料破損や水の放射分解で発生する水素対策は、イグナイタ(点火装置の意味)で燃焼処理することになっているが、格納容器や配管損傷により一気に大量発生するような場合は特に、燃焼処理ではなく起爆装置になりかねない。 福島第一及び米国スリーマイル島原発事故の教訓からも可燃性ガスが大量に生ずる場合は、水素の逃がす装置を取り付けると共に、酸化剤つまり酸素を取り除くしかないのである。
原子炉を含む一次冷却材系統全体を防護するには、パラメータの監視は欠かせない。ところが福島第一原発事故では電源を全て失ったため、温度も圧力も水位も分からなくなった。これでは何をすれば良いか、したことに効果があるか、方針の変更をすべきタイミングかどうか、一切判断できない。
格納容器ベントを強行した福島第一原発事故では、吉田所長は最後まで「ベントが成功したかどうか分からなくなった。」と答えていた。
川内原発では、可搬システムも含めれば測定可能とされており、全てパラメータを監視して作業を継続することになっているが、こんな予定調和的な事故は起こらない。全ての電源を失っても、原子炉を冷却し続ける設備でなければ、教訓を生かしたことにはならない。
3.第5層の防護を放棄
「世界で最も厳しいレベルの規制基準」というのであれば、IAEAの安全対策「第5層」についても規制基準に取り込み、規制委員会が責任を持って審査するべきである。ところが規制委員会は防災対策を自治体に丸投げした。30km圏内の自治体でさえ、まともに計画も作れないまま、原発が動きだそうとしている。
これが世界で最も厳しいとは、あきれ果てる。米国は原子力規制委員会が自治体と事業者に義務づけている。実行性が無い計画ならば原発の運転認可が下りない。
日本に比べて人口密度が比較的低く、車社会である米国でさえ、住民の安全対策には規制当局も責任を負っている。これだけみても、日本の規制基準は米国以下であることは論を待たない。
原子力防災・住民避難計画については、自治体丸投げを止めて、国も責任を負うように災害対策基本法を改正する必要がある。
また、規制委員会設置法も、改正すべきだ。少なくても米国並みに緊急時の原子力防災・住民避難計画が、すべての規制対象の基本になるべきであり、それが達成されるまで再稼働の議論そのものも出来ないはずなのだ。
4.戦争法案と一体となった原発再起動
今日のシナリオは、既に2012年には明らかになっていた。
まだ野田政権だった時代の2012年8月15日(67回目の敗戦記念日である)に、米国「第3次アーミテージ・ナイレポート」が発表された。リチャード・アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国務次官補(ハーバード大学教授)を中心とした超党派の外交・安全保障研究グループ、CSIS国際戦略研究所による日本への「提言」である。いわば「外圧」文書であるが、主張を全部公開して圧力を掛けているわけだ。
この中で、原発の再稼働が明記されている。当時は民主党政権下において2030年代までに原発を全て廃止する方針が論議されていた。しかし閣議決定は見送られた。米国からの圧力であった。原発からの段階的撤退を、さらなる原発輸出へと方針を180度転換させた。
このレポートには他に重要な記述が沢山会ったが、現在大きな問題になっている、安倍政権による「集団的自衛権の行使容認」「TPP」「PKO」「戦後70年談話」これら全て、レポートに「指示された」内容になっている。そのため、一つ一つについて国会などで質問をされても、安倍首相をはじめ誰もがまともに答えられない。憲法学者が憲法に違反していると指摘されても、お門違いの砂川最高裁判決を持ち出したり、「統治行為論」でごまかそうとしたりするが、まともに論理を構築できないのは、結論ありきだからだ。
5.原発を動かして赤字になる電力会社
九州電力を含めて全電力は「原発を稼働させなければ赤字になる」などと主張するが、実際には全く電気を生まない原発に、巨額の投資を続けながら火力発電を続けるならば赤字になるのは当たり前である。
発電設備に占める原発の比率が高い電力ほど、厳しくなるのは小学生にも分かる理屈である。それなのに原発に資金をつぎ込み続ける行為は、経営者としてそもそも失格であり、そんなことにまでどうして消費者が「電力料金」で買い支えてあげなければならないのか。全く本末転倒であり、電力の経営が厳しいから再稼働など、そもそも理由になどならない。
また、原発が動き出しても電力の経営は好転しない。なぜならば、九州電力でたかだか89万kwの設備が2基動く程度では、焼け石に水だからだ。
九州電力は設備全体で1600万kwほどを今季最大電力と見積もっている。
その1割強を原発が占めているに過ぎず、発電コストを引き下げる効果はほとんど無い。むしろ対前年比「定着節電」「他電力への移動」があわせて181万kwと、原発分をまかなってしまっている。電力消費量は年々低下を続ける中で、つまり電気料金収入が減少し続ける中で、川内、玄海原発に係る設備投資が減らないどころか増え続ける一方ならば、動かし続けていても経営状態を改善する効果はほとんど無い。
それでも原発に固執し続ける背景には、国からの大きな圧力があると見るのが自然だろう。
6.これからも原発の停止を訴え続けよう
原発を動かしても電力会社にとっては針のむしろ状態は変わらない。これからは、事故が起きれば経営者の個人責任も厳しく追及される時代になっている。
検察審査会による東電取締役3名の強制起訴が、次の事故では直ちに起訴される可能性も出ている現状では、電力会社の取締役個々人の判断にも大きな影響を与える可能性がある。
また、首相官邸、国会前に集まる人々が今も続いていることは重要だ。経産省前にはテントも頑張っている。
世論調査はどれをみても、過半数を大きく超える声が「再稼働反対」を支持している。
福島の被害者は、自分たちを置き去りに進められた原発再起動に強い怒りを表明している。
今後、事故の脅威にさらされる人たちからも、怒りの訴えが続いている。
原発前から国会前に至る、全国の声を、国、電力、経産省、規制委員会にぶつけて、一日も早く原発災害を案ずる必要の無い日々を作るために、これからも力の限りがんばろう。
┏┓
┗■2.議論が分かれる巨大地震前の「静けさ」 「地震空白域」検証も
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその114
└──── 島村英紀(地震学者)
「嵐の前の静けさ」が大地震の前にもあるものかどうか。これはいまだに解けない問題である。
地震学者は古くから、この現象「地震空白域」の検証に取り組んできた。
もっとも有名だったのが北海道・根室沖に起きた海溝型の地震だ。
ここでは1952年に十勝沖地震(マグニチュード(M)8.2)が西隣に、そして1969年に色丹(しこたん)島沖地震(M7.8)が東隣に起きて、その間の根室沖が抜けていた。どれも海溝型地震である。
たしかにこの場所には小さい地震がまわりより少なく「嵐の前の静けさ」を感じさせた。
かつて根室沖には、1894年にM7.9と推定される海溝型の大地震が起きた。それから100年近くたち、地震エネルギーはかなり溜まっていても不思議ではなかった。
このため、ここにまた大地震が起きるのではないか、と1970年代に入ってから言われはじめた。
小さな地震さえも起きなくなっている領域、空白域の拡がりから、来るべき大地震の震源断層の大きさも推定された。それはM8クラスの巨大地震であった。
震源断層が大きいほど、大きな地震が起きる。2011年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は岩手県沖から茨城県沖までの南北450キロメートル、東西150キロメートルにもおよぶ大きな震源断層だった。
来るべき大地震がいつ起きるかは分からない。だが固唾を呑んで待っていた1973年、ついに、それらしき地震が起きた。根室半島沖地震だ。
この地震で津波による浸水被害が300棟近く、負傷者は26人出た。Mは7.4だった。
だがその後、この地震が予想されていた大地震ではなかったという説が強い。M7.4はM8地震のエネルギーの1/8でしかないからだ。
空白域が来るべき大地震の場所と大きさを予知できるはずだという研究はその後も少なくない。大地震が近づくと、その空白域の中にぽつぽつ、地震が起き始めるという研究も近年にはある。
ちょうど6年前の2009年8月、南海トラフ地震で警戒されている震源域の中で強い地震が起きた。震源は駿河湾内。最大震度は6弱に達した。Mは6.3。幸い大きな被害はなかったが、東名高速道路が4日間不通になって、道路だけで経済損失額は21億円になった。
2011年にも静岡県東部で最大震度6強を記録したM6.4の地震があった。この地震は東北地方太平洋沖地震の4日後で、この地震による誘発地震ではないかと思われている。
南海トラフ地震で予想される震源域は、この数十年間、地震活動がとくに低い。つまり空白域になっている。
学問的には空白域がきたるべき大地震の先駆けになるのか、そして大地震が近づくと空白域の中で地震が起き始めるのかは決着が付いていない。そうではなかった例も多いからだ。
しかし、いままでは地震がほとんどなかった静岡でぽつぽつ起きている地震は気味が悪い。
(島村英紀さんのHP「 http://shima3.fc2web.com/ 」
「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より8月7日の記事)
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┗■3.新聞より2つ
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◆再稼働「なぜ急ぐ」 現地周辺で2000人集会 危険性訴え行進
九州電力川内原発の再稼働に反対する「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は9日、薩摩川内市久見崎町の原発周辺で大規模な集会とデモ行進を実施した。県内外から約2000人が集まり、「再稼働やめろ」「原発いらない」とシュプレヒコールを上げた。
集合場所の久見崎海岸では、市民団体の代表や県外からの参加者が原発の危険性や九電への批判を唱えた。 (中略)
東日本大震災が起きるまで福島県で農業をしていた元宇宙飛行士の大学教授、秋山豊寛さん(73)も京都から参加。「電力会社や政府は一般の人が声を上げるのを最も恐れている。一人一人が声を上げよう」と語った。
(8月10日南日本新聞20面「川内原発を考える」より抜粋)
◆再稼働反対デモに2000人 川内原発周辺で最大規模
九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働への反対を訴えようと「川内原発再稼働阻止!大集会」が9日、川内原発脇の海岸であった。実行委員会の発表によると約2000人が参加。九電が11日に再稼働させるとみられる中、川内原発周辺での集会としては過去最大規模となった。「原発事故から命を守れ」などと訴え、原発正門前までの約2キロをデモ行進した。
原発問題に詳しいルポライターの鎌田慧さんが集会であいさつし、「(事故発生を前提に)安定ヨウ素剤を配布して原発を稼働させるのは、人が死んでも構わないということ。モラルに反することが平然と行われている」と批判した。参加者は「命と大地を放射能から守れ」「福島を忘れない」などと書かれた横断幕を手に練り歩いた。
(8月10日毎日新聞・鹿児島版26面より)
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