NUCLEAIRE
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┗■3.南海トラフで東京の超高層ビルが5メートル揺れる?
│ 長周期表面波の恐怖
│ 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その76
└──── 島村英紀(地震学者)
ちょうど10年前の新潟県中越地震(マグニチュード(M)6.8)の被害は地元
だけではなかった。ほとんどが震度3だった東京でも、思いもかけなかった
「被害」が出て青くなった関係者がいた。
港区にある54階建ての超高層ビルのエレベーターを吊っているメインワイ
ヤーが切れてしまったのだ。鋼鉄製のワイヤロープは直径1センチもある。幸
い、エレベーターは非常ブレーキで止まって、大事故にはならなくてすんだ。
Mは7にも満たず、距離は250キロも離れた地震でこの「被害」。
地震学的にはこの高層ビルを予想外に揺らせたのは「長周期表面波」という
ゆっくり揺れる地震波だ。ほかの地震波が地球の内部を伝わってくるのと違っ
て、これは地球の表面だけを伝わる。
普通の地震波は距離が増えると距離の3乗で小さくなっていく。これとちが
って「表面波」は距離の2乗でしか小さくならない。つまり遠くに行っても普
通の地震波ほどは弱くならないのだ。
この長周期表面波に注目していた地震学者かいた。岐阜大学のM先生は30年
以上も前からこの地震波が超高層ビルに及ぼす影響の観測を企てていた。
日本で超高層ビルが建てられるようになったのは1964年。建物の高さが31
メートルまでという建築規制が撤廃されたのだ。
東京のあちこちで建てられ始めた超高層ビルの上と下に地震計を置かせてほ
しいとM先生はあちこち交渉した。だがビルの所有者は地震計を置くのを嫌が
り、ようやく新宿の超高層ビルで「ビル名は決して出さない」という約束で置
かせてもらった。
そして1984年、長野県西部地震(M6.8)が起きた。最上階では地階の20倍
以上も揺れ、しかも揺れが長く続くことが初めてわかった。
東日本大震災(2011年)のときには大阪府咲洲(さきしま)庁舎(旧WTCビ
ル、55階建)で天井が落ちたり床に亀裂が入り防火戸が破損するなど360ヶ所
もが損傷した。エレベーター4基に5人が5時間近く閉じこめられた。エレ
ベーターを支えるワイヤロープがからまって翌日にも8基が復旧しなかった。
震源から800キロも離れたところだ。
恐れられている南海トラフ地震が起きたときには東京の高層ビルの上部は振
幅5メートルもの揺れになると予想している科学者もいる。そんなに揺れたら、
ビルそのものは倒壊しなくても中にいる人々はコピー機やロッカーなど重い家
具につぶされてしまうだろう。
超高層ビルには限らない。巨大な石油タンクや、長大な橋、新幹線の土木構
造物など、振動の固有周期が長い建造物はどれも強い長周期表面波の洗礼を受
けたことがない。
最近はようやく対策がとられ始めている。しかし対症療法的なものだ。そも
そものビルの設計のときにどのくらいの地震波が来るか知らないまま、ゼネコ
ンや工学者たちが設計しているのは、地震学者として、とても心配なことなの
である。 (11月7日『夕刊フジ』より)
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┗■4.新聞から
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◆再稼働同意手続き 「川内」前例化を懸念 「地元」範囲拡大 強まる声
(11月12日 東京新聞より)
原発の再稼働に事実上同意が必要になる「地元」の範囲について、政府は立
地する鹿児島県と薩摩川内市に限定した九州電力川内原発をモデルにしたい考
えだ。しかし福島の事故では被害が広域化したため、範囲拡大を求める周辺自
治体の声も強まっており、今後の再稼働の同意手続きは難航する局面もありそ
うだ。