NUCLEAIRE
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3.九州の特殊性
九州は、巨大火山活動だけでなく、地殻が引っ張られる力が活動する地域となっている(地殻応力が伸張場)。このような地域では、どこでも火山が誕生する可能性がある。この火山活動は、日本海側の石川県金沢市付近から山口県萩市周辺・北九州そして五島列島まで線状に分布している。九州の北西部では数十万年前に非常に活発な火山活動していた。多くは小型単成火山で、ハワイ島のような噴火をして、1日から数ヶ月間の非常に短期間で形成された。これらの火山は、独立である場合もあれば、いくつかが線状に群となるときもある。そして、火山が今まで無かったところに突然噴火が起こることもあり、ノーマークとなっている。火山活動は小型で噴火規模も小さいので危険視されないが、原発の近くで生じることもある。玄海原発はこのような地殻運動を生じる地域に接近している。
さらに、海域での火山の誕生やそれによる火山が大規模に崖崩れして、津波も発生する。地震による津波が注目されるが、火山の崖崩れは、時速150kmくらいの速さで流下し、到達距離は崩壊の発生した標高の10倍から20倍の距離になる。江戸時代に長崎県島原で発生した火山体崩壊で大津波が熊本県有明海沿岸に押し寄せ、多くの犠牲者が出た。また、1741年に北海道渡島大島の噴火で大崩壊が生じ、大津波が発生している。巨大噴火ばかりでなく、小型の噴火活動に対しても注意を払うべきである。
いずれにしても、私たちが生きている間に甚大な災害を生じる火山活動を経験すると考え、想像した方がよい。火山噴火のような過酷な自然現象の発生は非常に稀だが、その発生が数年後になるのか、数万年後になるのか、現代科学ではわからない。そして発生したら大きな災害をもたらす。
一方、原子力発電所の稼働期間は数十年、使用済み燃料や核廃棄物の保管期間は数万年だが、原子力発電所の事業者は原子力発電所の稼働供用期間のたかだか数十年間という時間スケールで、このような過酷な自然現象に対する原子力発電所の安全性の確保を考えている。ここが、原子力発電所事業者の考え方(政府の考えも)と科学者の常識との間の大きなずれというか、根本的な視点の違いがある。日本は、東側がプレートの沈み込み帯となって地殻がほぼ東西方向に圧縮され(圧縮場)、一方、九州の西側では逆に地殻が裂ける力が働いていて(伸張場)、極めて不安定で、活発な地殻変動地域である。どこにも安定した地域が無いのが原子力発電所にとって不幸なことである。
*伸張場・・・プレートが衝突する場所では地殻が圧縮されて圧縮場となる。日本の太平洋岸が相当する。その結果、3・11の地震が生じた。一方、日本海側や東シナ海では左右に地殻が広がる力が働き、伸張場となっている。そこでは壱岐・五島列島・韓国チェジュ島など単成火山が生じている。
4.火山灰について
火砕流だけでなく、火山灰の問題も深刻である。降下火山灰の厚みが10cm以上になれば、すべてのライフラインは失われ、原子力発電所にとって最重要な冷却水の供給が困難となろう。江戸時代、富士山が噴火したとき、江戸で数cmの火山灰が積もった。現代社会は、そのような大噴火を経験していないが、規模の小さい噴火活動は、既に多くの火山周辺で経験している。大規模な自然現象が生じ、過酷な災害となる可能性のある日本では、広域の避難は不可能となる。また、大規模災害発生時には、原子力発電所はそのまま放置されることとなる。こんなことは許されない。